
練習法・上達 · サックス | 中学生・高校生・初心者/文・吹部のミカタ編集部
この記事には広告・アフィリエイトリンクを含む場合があります。
「毎日ロングトーンをやっているのに、うまくなっている気がしない」——サックスの上達は、メニューを増やすより“今つまずいている所”から逆算すると一気に近づきます。
この記事は、音は出るようになったサックスの初心者〜中級手前の中高生に向けて、ロングトーン・タンギング・運指という3つの土台を「どの順で・どれくらいの時間・何を目印に」練習すればいいかを整理したものです。がむしゃらな反復ではなく、症状(=今できないこと)から練習を選ぶやり方を軸にします。
想定読者は、サックスを始めて1か月〜1年ほどの中学生・高校生と、独学気味で「個人練習で何をすればいいか分からない」人。組み立てや初日の音出しは扱いません(→サックスの始め方)。ここでは音が出た後の“上達メニュー”だけを、時間別・週サイクル・症状別に落とし込みます。
この記事でわかること
- サックスのロングトーン・タンギング・運指を、上達しやすい順番と時間配分で組む方法(10分/20分/45分)
- 「音が揺れる」「指が回らない」など症状から逆引きして原因と処方を選ぶ診断表
- 平日・週末・テスト期間の週サイクルと、伸びを確認するためのチェック基準
- 初心者がやらない方がいい練習(逆効果になりやすいパターン)
練習前に、ここだけ見てください
- 毎日必ずやる土台:ロングトーン(音を支える)→タンギング(音の頭をそろえる)→運指のゆっくり反復。この順が崩れにくい。
- 時間がない日は削る順番を決めておく:45分→20分→10分で「何を残すか」を先に決める(後述の時間別メニュー)。
- あわてて増やさない:フラジオ(最高音域の特殊運指)や速い曲は、ロングトーンとタンギングが安定してから。先取りは伸びを止めやすい。
- 迷ったらまず1つ:スマホで自分の音を録って聴き返す。上達のいちばんの近道は「自分の耳が今の音を正しく知ること」です。
「正しいやり方」より「今つまずいている症状」から選ぶ
多くの練習記事は「ロングトーン→タンギング→スケール」の正しい順番を上から説明します。でも実際に困るのは、「音が揺れる」「指が回らない」「高い音がひっくり返る」といった症状のはずです。だからこの記事は、まず症状から原因のあたりをつけ、今日試す練習を選べるようにしました。編集部の経験でも、伸び悩みの多くは「練習量が足りない」より「合わない練習を反復している」ことが原因でした。

| 症状(今できないこと) | ありがちな原因(目安) | 今日試す処方 |
|---|---|---|
| 音が揺れる・まっすぐ伸びない | 息の量が一定でない/お腹で支えていない/噛みすぎ | チューナーの針を見ずに、テンポ60で1音を8拍。針の揺れが小さく、音色も崩れなければ支えが安定してきた目安 |
| タンギングが遅い・舌が疲れる | 舌を動かしすぎ/息が止まっている/力み | 息はロングトーンのまま流し、舌先でリードに軽く触れるだけ。4分→8分の順で |
| 速い曲で指が回らない | 指が上がりすぎ/苦手な運指の連結/速さで練習している | その2〜4音だけ抜き出し、確実に鳴る最遅テンポから。指はキーの近くに |
| 高い音がかすれる・ひっくり返る | 息のスピード不足/喉を締める/低音との吹き分けが未確立 | 同じ運指の低音→高音をゆっくり往復。噛まずに息を速く。無理な最高音は先送り |
| 指と舌がそろわない(タタッと二重に聞こえる) | 舌に指を合わせている/速く動かしすぎ | スケールを「1音1タンギング」で最遅テンポ。指が先に決まる速さに落とす |
※原因・処方は一般的な目安で、個人差があります。痛みや違和感が続く場合は無理をせず、先生に相談してください。用語=フラジオ:本来の音域より上の特殊運指で出す最高音域。アーティキュレーション:音のつなぎ方・切り方の付け方。
まず土台の3つを、この順で
サックスの上達は、次の3つを下から積むのが基本です。上の段は下の段が安定して初めて伸びます。順番を飛ばすと、崩れやすいメニューになります。
1. ロングトーン(音を“支える”練習)
1音をまっすぐ長く伸ばす練習です。目安はテンポ60で8拍。ねらいは「長く吹く」ことより、音程・音量・音色が最後まで変わらないこと。慣れたらpp(とても弱く)からff(とても強く)へ、また戻すクレッシェンド・デクレッシェンドを加え、どの音量でも音色が崩れないかを確かめます。全音域を半音ずつ上下し、同じ吹き方で音色をそろえるのが到達目標です。
2. タンギング(音の“頭”をそろえる練習)
舌先でリード(葦=あしの薄い板。震えて音になる部分)の振動を軽く止めて、音を区切る動きです。コツは「舌で音を出す」のではなく、流れている息を舌が一瞬だけ止めると考えること。真ん中あたりの出しやすい音で、テンポ60の4分音符→8分→16分と段階的に速くします。息はロングトーンのまま止めないのが最大のポイント。舌が疲れる人は、たいてい息が止まっているか、舌を動かしすぎています。
3. 運指(指を“確実に”動かす練習)
スケール(音階)を使って、指の動きと息・舌を合わせます。速く弾くための練習ではなく、すべての音が均一に鳴る最遅テンポで、指がキーから離れすぎないように。苦手な運指の連結(例:小指を使う低音のつなぎ)は、その2〜4音だけを抜き出して反復し、前後の音と接続してから元のスケールに戻します。指・舌・息が同時にそろう速さが、今の“正しい速さ”です。
時間別メニュー:今日“何分あるか”で決める
練習メニューは、並べるだけでは続きにくいものです。実際の部活は使える時間がバラバラ。そこで、使える時間から逆算して何を残すかを先に決めておきます。削る順番の判断基準は次の3つです。
- 土台ほど残す:時間が短いほど、ロングトーン>タンギング>運指の順で優先。
- “今日の症状”を1つ入れる:診断表から、その日いちばん気になる症状の処方を必ず1つ。
- 最後に曲:基礎で整えてから曲を触る。逆にすると、崩れたまま曲で固まります。
| 使える時間 | 配分の目安 | この日にやること |
|---|---|---|
| 10分(朝練・すきま) | ロングトーン6/タンギング4 | 土台だけ。運指と曲は思い切って省く |
| 20分(放課後の短い日) | ロングトーン7/タンギング5/運指5/症状処方3 | 土台+その日の症状を1つ。曲は無理に入れない |
| 45分(通常の個人練) | ロングトーン10/タンギング8/運指12/症状処方5/曲10 | 最後の5分で録音して聴き返す(後述) |
※分数はあくまで目安。集中が切れたら短く区切ってOK。学校のメニューや先生の指示がある場合は、そちらが優先です。
1週間の回し方(平日・週末・テスト期間)
毎日フルメニューは続きません。“同じことの繰り返し”と“1点集中”を週の中で分けると、飽きずに伸びます。編集部の実感では、伸びる人ほど週に1回は「録って聴き返す日」を持っています。
- 平日:時間別メニューを回す。ロングトーンとタンギングは毎日、運指は日替わりで別の調のスケール。
- 週末(時間がある日):症状の処方をじっくり。苦手な運指の連結や、pp〜ffの吹き分けなど、平日にできない“詰め”を1つ。
- テスト期間(楽器に触れない日):楽器なしでも運指はできます。指だけ動かすサイレントフィンガリングや、楽譜を見て階名で歌うのは、部屋でも家でも音を出さずにできる練習です。
上達の近道は「録って、聴き返す」
「録音するといい」とはよく言われますが、何を聴けばいいかまで踏み込んだ説明はあまり見かけません。編集部の独自見解として、個人練の最後の5分を“録音チェック”に充てるのは、どんな追加メニューよりも費用対効果が高いと考えています。理由は単純で、吹いている最中の自分の耳は当てにならないから。録って聴くと、揺れ・音の頭のズレ・雑音が客観的に見えます。スマホ1台で始められます(→スマホだけで始める練習録音のやり方)。
録音を聴き返すときのチェックリスト
- ☐ ロングトーンの音程は、最後までまっすぐ伸びているか
- ☐ pp→ffで音色が変わらず、音の芯が保てているか
- ☐ タンギングの「音の頭」がそろい、息が切れていないか
- ☐ 速いフレーズで、指と舌がそろって聞こえるか(二重に聞こえないか)
- ☐ 気になった箇所を1つメモし、次の練習の“症状”に設定したか
まだやらなくていい・やらない方がいい練習
上達を焦ると、かえって遠回りになる練習があります。土台が安定するまでは、次はあわてなくて大丈夫です。
- フラジオ(最高音域の特殊運指):憧れますが、通常音域のロングトーンと息の支えが先。土台なしで挑むと、噛み癖や喉の締めがつきやすい。
- ビブラート:音がまっすぐ伸びてから。まっすぐ吹けないうちにかけると、揺れとの区別がつかなくなります。
- いきなり速いテンポの曲:速さで練習すると、雑なまま指が固まります。必ず「確実に鳴る最遅テンポ」から。
この記事が向かない人
正直にお伝えします。次のような人には、先に読むとよい記事があります。
- まだ安定して音が出ない人:組み立てや初日の音出しでつまずいている場合は、上達メニューより先にサックスの始め方から。
- 体系立った基礎練を1冊で通したい人:メニューを本の順に積みたいなら、基礎練習に役立つ教本まとめで自分のレベルに合う1冊を。
- コンクール本番が目前の人:この記事は日々の土台づくり用です。直前の詰め方は準備の記事に譲ります。
学校や先生に確認すべき点
練習法には「正解が1つ」ではない部分があります。この記事は一般的な目安なので、次の点は必ず顧問の先生やパートの先輩に確認してください。学校・先生の指示があれば、それがこの記事より優先です。

- 基礎練の指定メニューはありますか?——部で決まった順番があれば、それに合わせます。
- タンギングやアンブシュアの指導方針は?——舌の位置や口の作り方は流派で差があり、独学の情報とぶつかることがあります。
- 個人練で見てほしい所は?——自分では気づけない癖を、早めに直してもらえます。
メニューを増やすより、今つまずいている1点を、ゆっくり確実に。
よくある質問

ロングトーンは毎日何分やればいいですか?
時間より「質」が大事です。目安はテンポ60で8拍を数音。短い日でも5〜6分は残したいところ。長くやること自体が目的ではなく、音程・音量・音色が最後まで変わらないかを確かめるのがねらいです。針を見ずに、耳で支えましょう。
タンギングで舌がすぐ疲れてしまいます。どうすれば?
たいていは「舌を動かしすぎ」か「息が止まっている」のどちらかです。息はロングトーンのまま流し続け、舌先でリードに軽く触れて離すだけにします。テンポは4分音符からで十分。速さは、疲れずに続けられる範囲で少しずつ上げてください。
高い音がかすれたり、ひっくり返ったりします。
原因は息のスピード不足や喉の締めが多いです。同じ運指の低い音と高い音をゆっくり往復し、噛まずに息を速くする感覚を探します。出ない最高音を無理に狙うより、確実に出る音域を安定させる方が近道です。痛みが出たら中止し、先生に相談を。
速い曲で指が回りません。指の練習だけすればいい?
回らない箇所は、たいてい特定の2〜4音の連結です。そこだけ抜き出し、確実に鳴る最遅テンポから始めます。指はキーの近くに置き、上げすぎないこと。速さで練習すると雑なまま固まるので、そろってから少しずつテンポを上げてください。
独学だけで、どこまで上達できますか?
土台(ロングトーン・タンギング・運指)は独学でもかなり伸ばせます。ただし、自分では気づけない癖(噛み・喉の締めなど)は、先生や先輩に一度見てもらうと直りが早いです。録音チェックと合わせれば、独学でも“気づける耳”を育てられます。

あわせて読みたい
文・吹部のミカタ編集部 | 吹奏楽・音大・ジャズ研の経験をもとに「買う/待つ」と「続けられる練習」を判断できる情報を発信。奏法・上達には個人差があります。痛みや不調が続くときは無理をせず、先生に相談してください。